5月10日に開催された皇位の安定継承を目指す
有識者会議の第4回会合。“憲法上の検討”を中心課題としたので、
他の回とは異なる重要性を持つ。そこで、現在の憲法学界を代表する2人の学者
(京都大学名誉教授の大石眞氏、東京大学教授の宍戸常寿氏)が、
「旧宮家案」(更に旧宮家に限らず、皇族ではない皇統に属する
男系の男子に広く皇籍取得を可能にする案)に対し、
揃って憲法が禁じる「門地(もんち)による差別」に当たるとして、
憲法違反の疑いがあることを指摘された。
この事実は重大だ。参考までに、それぞれが提出された「説明資料」から、
関連箇所の一部を掲げておく。「(上記の案は)一般国民の間における平等原則に対して
『門地』などに基づく例外を設け、『皇族』という継続的な
特例的地位を認めようとするものである。
そうすると…憲法上の疑念があると言わざるを得ない」(大石眞氏)「法律(皇室典範)等で、養子たりうる資格を皇統に属する
(皇族ではない)男系男子に限定するならば…
一般国民の中での門地による差別に該当するおそれがある。
さらに、仮に旧11宮家の男系男子に限定する場合には、
皇統に属する(皇族ではない)男系男子の中での差別に該当する
という問題も生じる」「内親王・女王との婚姻を通じた皇族との身分関係の設定によらず、
一般国民である男系の男子を皇族とする制度を設けることは…
門地による差別として憲法上の疑義があると考える」(宍戸常寿氏)念の為に、憲法の該当条文を引用すると、以下の通り。
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、
性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的関係において、
差別されない」(第14条第1項)「国民平等」の原則を定めた条文だ。この例外は唯一、
憲法第1章に基づいて国民とは立場を異にする、天皇・皇族“のみ”。皇統に属する男系の男子は旧宮家系に限らず、国民の中に多くいる。
しかし、皇族でない以上、この条文自体が改正されない限り
(たやすく改正されるとは考え難いが)、例外扱いは許されない。なお、「門地」とは一般に「家柄。家格」)
(『明鏡国語辞典〔第2版〕』)のこと。憲法の注釈書には以下のように説明している。
「『門地』とは『うまれ』あるいは『家柄』の意味で、
正確にいえば、出生によって決定される社会的な地位または条件をいう」
(宮澤俊義氏、コンメンタール)と。旧宮家系男性(あるいは、広く皇族ではない男系の男子)の場合、
まさにこれに該当する。
政府が密かに、旧宮家案を早々と現実的な選択肢から
除外した最大の理由は、実はこの点にあったのかも知れない。【高森明勅公式サイト】
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